2022年にバンコクに誕生したアートスペース/ギャラリーSTORAGE(ストレージ)。その名の通り、アーティストの作品のストレージを展示空間にも活かそうということで生まれたアートスペースだ。チャオプラヤー川からも程近く、中華街の奥の古き良き街並みが残るプラスーメーン通りの一角にあるビルの3階にオープンした。
ビルおよびスペースのオーナーであるアーティストは、アーティット・ソーンソンクラーム(ウアン)。70年代後半に建てられたというこのビルは、当初はウアンの家族が住みつつ印刷会社を営んでいた。20年ほど前に閉業したのちは、所有者の自宅とテナントを含むビルとして使われてきたが、知る人ぞ知るバンコクの隠れ家バーKu Bar@ku_bkkがテナントとして入っていたり(STORAGEと同じフロア)、STORAGEが誕生する前にも何度か展示やイベントに使用されてきた。
そして2022年に建築家ユニットspinの設計によりリノベーションされ、ウアンとパートナーのプレー・プーピッタヤーサターポーンの作品を保管する場所&アートスペースのSTORAGEとして、新たなスタートを切ったのだ。
当初は、2人のアーティストの作品保管庫としての機能のみを想定していたものが、せっかくなのでと、ユニークな可動レイアウトを持つアートスペースとして活用されることになった。その運営を任されたのが、インディペンデント・キュレーターのメアリー・パンサンガとアーティスト/キュレーターのサティット・サッタラーサート(パム)の2人だ。
今回はメアリーに、STORAGEの誕生と運営について、そして彼女の最近の実践について話を聞いた。
Q: STORAGEはどのように始まったのですか?
STORAGEは2022年9月にオープンしましたが、リノベーションが終わったのが2022年前半です。
私とパムは、スペースが完成したところで、場所を作ったからには運営する人が必要だと考えたオーナーから誘われて、チームに加わることになりました。
設立者であるウアンは、当初はフロア全体を2人の作品を収納するためのストレージにしてしまう計画でした。しかし、リノベーションのデザインを依頼していた建築家と話し合う過程で、過去に場所を借りにきた人たちが展覧会をやったり、パブリックスペースのようになっていたため、場所にポテンシャルがあるだろうから全フロアを潰してしまうのは勿体無い、一般公開するためのアートスペース機能も兼ね揃えた場所にする方がいいだろうということになり、建築家とオーナー2人が一緒に場所のデザインをすることになりました。
当初は、作品を収蔵する部屋を作り、その片面をウィンドウスペースにして、そこだけを一般公開すること考えていました。そうすれば誰かが展示の監視をしたりしなくてもいいので運営的にいいだろうと考えていたからです。
しかし、話し合ううちにアイディアが膨らんでいき、現在の、ウィンドウ部分を移動・回転できるようにして、柔軟にレイアウトを変えられる機能をもったスペースになりました。
同時に、古い建物の一部であることから、そこに突然新しいキューブが挿入されたような形ではなく、ストレージ/アートスペース空間が違和感のあるものにならないように、最初からここにあったものに見えるような形にデザインされました。例えば、新しく作られた部屋の壁として使われているブロックのデザインは、元々あったブロックの柄と同じになるようにデザインして新しく作ったものです。ただ新しくきれいに場所を作るだけではないというのがスペースを作る時の重要なポイントでした。
設立した二人は場所を作って満足し、私たちに運営が任されたというわけです(笑)
実は、このようにリノベーションされる前に最後にこの場所を使ったのは、私が企画者の一人である「expensive to be poor」というプロジェクトのポップアップ展示でした。
このプロジェクトは、コロナ禍の2020年に、私と友人のアーティスト、プラチャヤー・ピントーンとタナチャイ・バンダサックの3人で立ち上げたものです。コロナ禍では何をするにも困難で、作品を売り買いできるプラットフォームについて考えていたところから生まれた、作品のオンライン販売のためのウェブサイトです。ここで販売される作品は、10,000バーツ以下での販売という条件を設定し、一緒に仕事をしたいと思ったアーティストに声を掛けて作品を制作してもらいました。私たち運営側は、必要な経費だけ受け取り、売上のほとんどはアーティストの収入になります。
私たち3人が共通して関心を持っていた考えは、アート(作品)を買うという行為を考えた時、コレクターと呼ばれる人々は裕福な人々で何か肩書きがある人ばかりでないといけないのか、誰にでもアートを買う権利はあるし誰でもコレクターになれるのではないか、なってもいいのではないか、というものです。なので、一般の人でも買える価格の10,000バーツという設定にしました。声を掛けたアーティストたちは、10,000バーツ以下で作品を販売したことがないと人も多く、ファンの人たちにとってはこれまで手が届かなかったアーティストの作品にも出会えるという機会になりました。例えば、プラチャヤーさんの作品は通常、1万バーツ以下で売られることはなく、好きだから買いたいと思っても買えないという場合がほとんどですが、このプロジェクトの中だと彼の作品にも手が届くというわけです。
作品の売買やアートマーケットというのは、アートシーンを存在させるに重要ですが、裕福な人の存在に依存して成立するわけではないと思います。友人同士、普通の消費者同士でも成立させることができる、すべての人がアートシーンを支えている。誰でもコレクターになれるし、トップダウンでなくても、好きなものを好きなように楽しく作品を売買することができる、それがこのプロジェクトの意図でした。
一方で、作品を制作するアーティストにとってはチャレンジングでもありました。1万バーツ以下で販売する作品を考えなくてはならず、難しいこともあったと思います。でも小さいものが廉価で大きなものが高価だとは言いませんでした。そしてまた、作品を売ると言っても、たくさんエディションを作ってたくさん売る、というものでもありませんでした。普段のアーティストの実践に沿ったものを制作してもらい、その制作意図や背景などについてもウェブサイトに紹介文を掲載するということにも重きを置いていました。ただ売るだけではなく、買う人たちにそうしたことを理解して欲しかったのです。
プロジェクトを立ち上げた頃は作品も売れていましたが、今はペースがゆっくりになって、私たちも状況に合わせていこうと進め方を考えているところです。
その1つが、2021年12月に実施したポップアップ展です。コロナ禍が終わり、人々がオンラインだけでなく集まりたいと思っているのが感じられるようになってきたため、実際の作品を見てもらいアーティストにも会えるポップアップ展をやってみようと考え、リノベーション前のこの場所で実施しました。
多くの人が足を運んでくれたこの展示を終え、出品してもらうアーティストの創作の幅をもう少し広げたいと思い、その後「+0コレクション」を開始しました。文字通り、これまでの10,000バーツという価格に+0をして100,000バーツ以下で作品を販売するというものです。価格を一桁上げることで、アーティストにとっても普段制作しているものに近い価格帯になり、より自由に制作できるようにすることが目的です。そしてこの「+0」の始動と同時にポップアップ展示も開催することにしたのですが、展示場所を、ギャラリーではない、作品との対話が生まれる場所を選ぶことにしました。
「+0」は、新作のプロデュースの他に、アーティストが過去に作った作品で他に販売する場所や機会がないような作品の再紹介も目的の一つにしています。第1回目のポップアップ展示は、パムの旧作を紹介しました。この作品は2009年の作品で、彼が新聞の広告欄を購入し(通常、葬式の告知や宣伝のために買える)、「今日は静かな一日になるでしょう」という言葉を掲載したものです。当時の社会状況に応答して制作された作品ですが、その再展示の場所として、独立系書店のVacilando Bookshopを選びました。この作品が書店の中に展示されるのは面白いのではないかと考えたからです。
2回目は、「artifact」というタイトルで、2人のアーティスト、プレーとモンの作品を、YARNNAKARNというセラミックショップ(オーナーは現代陶芸作家のKarin Phisolyabut)で展示しました。プレーのペインティングは新作で、考古学的な破片に架空のランドスケープが描かれたものです。モンの作品は、彼が構想している映画の脚本に登場する架空の果物のイメージを、生成AIを使って表した写真作品です。YARNNAKARNの2階は、オーナーの作品やコレクションが展示されている場所で、そのミステリアスで「驚異の部屋」のような雰囲気が展示に合いそうだと思い、ここを借りて展示させてもらうことにしたんです。
これらのポップアップ展示は、形式に則った展示ではなく、遊びのある要素を入れたいと思っていました。
ギャラリーや美術館の文脈での展示ではなく、何気なく人が入っていくような場所、作品と観た人あるいは観た人同士で対話が生まれる場所で展示をすることで、アートエコロジーに対しての別の考えや視点を提供するものになればと考えていました。そしてまた、アート作品を買うということは、一部の特権階級の人だけの権利ではないということも、です。
これらのプロジェクトは全て今も継続しています。プロジェクトexpensive to be poorの中には、Ripple Projectというプロジェクトもあります。アーティストに依頼して短いビデオクリップを制作してもらうコレクションなのですが、一人のアーティストが映像を作成し、それを別のアーティストに送り、受け取ったアーティストはそれに対してのレスポンスの映像をまた作成するというもので、みんなが次へ次へと送っていきずっと続いていくプロジェクトの一部に参加してもらうような形です。明確なテーマはなく、ムーブメントについての動画をアーティストの貢献によって作ってもらいました。これもコロナ禍に始まったもので、2人のアーティスト(プラチャヤーとタナチャイ)がビデオクリップを送り合っていたところから、これはプロジェクトにできるのではないかと、他の人を巻き込み拡大していき、色々な人に貢献してもらう形になったものです。最初はインスタグラム上だけで映像を公開していたのですが、ある日バンコク大学ギャラリーからオンサイトで展示をやらないかという話があり、2023年3月に実施しました。
それまで、アーティスト、キュレーター、パフォーマー、色々な人に貢献してもらったので、私たちだけで展示構成を考えてギャラリースペースで見せるというのは何か違うと思い、アーティストを招いて構成を考えてもらうことにしました。第2回目以降もあるかもしれないという気持ちで、展示は「-onsite01」というタイトルにし、第1回目は日本人アーティストでベルリン拠点の岸野祐貴さんを招いて、この一連の作品を起点にインスタレーションを構想(conceive)してもらいました。複数の映像作品を展示したのですが、会場に実際のカメラを置いて、ウェブサイトのランディングページで会場の様子が流れるようにしました。
もしも他の場所にまた招かれることがあれば、その時はまた別のアーティストに依頼して構成を考えてもらうこともできるのではと考えています。
Q: STORAGEの話に戻り、始まりと、あなたが企画してきたことを聞かせてください。
最初の展示タイトルは「000」です。スペースは建築家の作品でもあると考え、リノベーション後の場所を見せることにしました。人々に場所のお披露目をして、どんな機能があるか知ってもらうこと、ただのホワイトキューブではなく壁を移動したり構成を変えることができる場所だということを見てもらうことが目的です。
オープニングの日、作品がどこにあるのかと探す来訪者もいました。来訪者が場所をじっと見つめているような(contemplate space)瞬間はとても良いものだと思い、今後この建築もその一部となるような展示をしたいと思いました。
私たちが関心があるのは、スペースと遊べる作品で、場所に対する視点(場所をみる手法)というのも展示の一部であると考えています。スペースは、ただの空白のホワイトキューブではない、という考えがあったので、リノベーション後の空間だけを見せることを第1回目の展示にしました。リノベーション案の検討をしている段階の建築家のドローイングも展示および配布をしました。今はオーナーの作品が収蔵されているので公開されていませんが、まだ作品が入る前のストレージ(収蔵庫)も公開していました。
おもしろいことに、こうして何もない空間を公開したことで、こんな展示ができます、という展示イメージ写真を加工して企画書を出してくる人たちがたくさんいたんです(笑)
2つ目の展示として私が企画したのがNesting Cavitiesという2人展です。一人はタイのアーティストのプラチャヤー・ピントーン、もう一人はオーストラリアのアーティスト、ニコラス・マンガンです。
「000」で建築家が作った場所そのものを作品として見せたところからアイディアが始まり、このSTORAGEの場所からインスピレーションを得た企画です。
この場所の特徴は、作品を保管する場所に人を招き入れて作品を見せる場所にし、また可動性もあり柔軟性がある場所だということです。そして、ここがこの土地のストレージであるというアイディアが生まれました。そこから、場所と身体について扱っている作品で、自分が一緒に働きたいと思うアーティストの作品を展示したいと思いました。
マンガンは場所と身体、そして物の変換を扱っていたので、彼のシロアリに関する作品を紹介したいと思いました。そしてマンガンとプラチャヤーの実践が似ていると思い、このアーティストたちの二人展をやってみたいと思い、彼らに連絡をしたところ、2人ともお互い一緒に仕事をしてみたかったということで、2人展の準備をすることになりました。
プラチャヤーにも過去作の展示を打診したのですが、新作を制作したいとのことで、それを展示してもらうことになりました。プラチャヤーの作品は、スズメバチの巣を扱ったものです。タイでは、幸運の象徴として蜂の巣を家の前に吊るすこともあるのですが、かなり前に、他の県に遊びに行ったときに、とても大きな蜂の巣が木にぶら下がっているのをプラチャヤーが見つけて気に入り、それを買ってきたことがありました。何に使うともなく彼はそれが気に入っていたので10年ほど持ち続けていたんです。
そして今回の展示の話があり、ついにこれを使うことになりました。作品名は「Sacrifice depth for breadth」(幅のために奥行きを犠牲にする)です。プラチャヤーは普段から物や言葉を収集しており、過去に書き留めておいたこの言葉が今回の作品タイトルにちょうど良いと気づき、決定しました。
作品は、手漉きの紙とインターネット上で公開された映像にアクセスできるQRコードの展示です。映像は、内視鏡カメラを使ってスズメバチの巣の中を観察して撮影した記録で、YouTubeで公開されています。そして、巣の中に内視鏡を入れた際に、入り組んだ巣の内壁をカメラが壊していってしまうので、その破片を集め、チェンマイの紙漉き職人に送って紙を作ってもらい、それをウィンドウスペースの中に設置しました。実際の空間に置かれた物理的な身体の記録と、サイバー空間に置かれた身体の記録であり、前者は実空間のストレージに、後者はサイバー空間のストレージに置かれ、身体とスペースの変容を表現していました。
マンガンの作品は、高度な技術を使ってシロアリの巣の構造を3Dプリントしたものです。全部で3つの段階がある作品のうち第3段階目を展示しました。
オーストラリアで、自然のシロアリの巣が埋蔵されている金を見つけ、採掘する手助けになるのではないかという研究があり、巣の構造やシロアリがフェロモンなど体内物質の分泌により集団的に意思疎通する方法について言及するのが第1-2段階の作品で、第3段階は、そこから人間の脳の働きに言及するものです。シロアリの集団的な意思疎通や巣の構造から、人間の個人の脳は、社会全体が意思疎通するための一つの伝達媒体なのではないかと思考するものです。
展示のタイトルをNesting cavities(空洞に巣を作る)としたのは、動物や昆虫が何もないところに巣を作るように、アート作品を作ることも空白に巣を作るようなもので、スペースと作品の関係を表していると思い、このタイトルにしました。
3つ目の展示は“Re-surfacing”で、パムが企画した5人のアーティスト(タイ、中国、シンガポール、フィンランド)のグループ展でした。それぞれの作品がさまざまな視点からsurface(表面)について語っているものです。
年内最後の展示はシンガポールのコレクティブが企画する展示です。
私たちは、いつも自分たちがキュレーションをする必要はないと思っています。現在やっている展示(訪問時はオーストラリアのアーティストを中心とした映像上映の展示中。英国拠点の映像キュレーター/研究者のメー・アーダードン・インカワニットが企画)のように、場合によってはコラボレーターやパートナーと一緒にやる展示もあります。
次の展示は、最初の展示「000」を見に来たシンガポールのコレクティブ(キュレーター1人とアーティスト3人)が、このスペースとこの建物がかつて印刷所だったという建物の歴史に関心を持ち、展示の企画書を提出してきたのが始まりです。彼らはシンガポールの助成金を自分たちで獲得してくるということで、予算は彼らが用意します。
私たちは、基本的には「STORAGEの運営をしている」者と名乗っています。毎回企画をしているキュレーターではないですし、アーティスティック・ディレクターでもありません。オープンしている日の看視も自分たちでやっています。スタッフを雇うことはそれだけでお金がかかりますから。ここの運営資金は、インフラはオーナーが負担してくれますが、それ以外は私とパムの裁量なので、助成金を探すもの、コラボレーターを探すもの、自己資金で実施するものがあります。
STORAGEは非営利のアートスペースというわけではないので、展示する作品を売ったりもしますが、展示を企画する際の手法としては、収入的な面を最優先にはせず、自分たちの関心を最も大切にしています。アートスペースをやる理由の一つは、自分たちが本当に関心があるもの、このスペースで見たいと思えるものをやりたいということです。展示企画のディレクション/方向性はあるのかと質問をされることもありますが、私たちがバンコクで見たいものをやることが方向性で、時間が経ってからこういうものがやりたかったのか、と見えてくるのではないかと思っています。
私たちは、自分たちが本当に興味があるアーティスト・作品・文脈から自分たちが自信を持って見せられるものを選んでいます。そして、多様性や差異に重きをおきたいと思っています。アートシーンをヘルシーにするのは多様性だと思うので。
そういう意味で、海外のアーティストも紹介したいと考えています。バンコクでは海外のアーティストの作品を見る機会が少ないと感じているので、アートシーンが多様になるようにもっと紹介したいと思っています。
私たちは、アーティストのためだけにアートスペースをやるわけではありません。アートスペースというのはパブリックな場所であり、観客のためのプラットフォームでもあると思っています。海外のアーティストを紹介するということにおいても、観客がその一部であるこのスペースで行うことに意味があり、アーティストを支援するだけということではなく、観客のために実施するということなのです。
Q: ストレージがあるのはどんなエリアなのでしょう?
ここは、バンコクでは旧市街だと言えると思います。プラスーメーン通りは、カオサン通りや民主記念塔に続くラチャダムヌン通りにも繋がるので、観光地でもありますし、とてもローカルでもある、バランスがとれたエリアだと思います。この辺りは歴史もあって興味深く、タイ人も観光に来るので、他の国や街からアーティストが来たときには見せるものが色々あります。バンコクの商業的な中心部とは違い、都市の一部ではありながら、都会すぎずノスタルジックさも残し、静寂と混沌が共存しています。王宮が近いので、高い建物が規制されており、ランドスケープが中心部とは違うというのもあります。運河を通る船を使って中心部から来られる場所でもありますし、私はこの街の雰囲気が気に入っています。
一方で、変わっていったものもたくさんあります。行政が街を整え「きれいに」していくことで失われるものもあります。花市場(パーククローンタラート)は、昔は花の質と共に特別な雰囲気があったのが、きれいになった今は前の活気は見られません。4年後には電車の駅も完成する予定なので、景色もさらにまた変わっていくでしょう。次の世代のためにも、古いものを壊して新しくするだけでいいのかというのは私たちが考えなければならないことです。
私はこの場所や土地に関係のある作品を紹介したいと思っています。アートスペースとして、新しいものと維持していくべき古いものとのバランスをとってやっていきたいと思っています。
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バンコクでは大きな資本を後ろ盾としたギャラリー以外のアーティストランスペースやオルタナティブスペースは、度々誕生しては、数年経つとなくなってしまうということを幾度となく私も目にしてきた。そして、アーティストランではなくキュレーターが運営するオルタナティブスペースはタイにはそう多くない。
バンコク実験映画祭やオルタナティブスペースcloudの運営を経てメアリーが仲間とともに新たに始めたプロジェクト。
公的な助成金はほとんどないタイで、どのようにスペースを続けていけるかというのは、私にとっては全く他人事ではない。変化の激しい街バンコクで、サステナブルに街と海外のアーティストを繋ぐ活動、この共通項を軸に近い将来メアリーたちを名古屋に招きたい、と誓い合って今回の訪問を終えた。